/ 2019年1月8日火曜日 / 2 Comments / ,

起業志民プロジェクト~世界が選ぶICT起業家育成エコシステム〜

スパルタキャンプ集合写真

About 八幡平市

八幡平市は、岩手・秋田・青森の県境に位置し、環境省の国立公園満喫プロジェクトの八つの重点地域の一つに選ばれている十和田八幡平国立公園の一角を担う、農業と観光が主要な産業となっているまちです。

アジア最大の硫黄産出量を誇った松尾鉱山を有し、最盛期の昭和35年に現在の市域全体で53,805人を数えた人口も、平成17年9月の八幡平市に合併した時点で31,766人に減少。30年12月末には25,876人と往時の半分以下にまで大幅に落ち込んでいます。

市内の田園風景

プロジェクトに取り組んだ経緯

八幡平市の人口減少率が高い理由の一つとして、市内で出生した子どもたちが、18歳で約1割、22歳で約2割が転出し、約25年周期で出生数が半減するという傾向が続いていることが挙げられます。転出の時期はいずれも学卒の年齢に当たり、就労のために人口流出が起きているものと仮説を立てました。県内の大学の就職先を見ても「情報通信業」が人気を集めていることに加え、市外へ転出した者へアンケート調査を行ったところ、市内へ戻らない理由のトップが「望む仕事がないから」という回答が過半数を占めました。

八幡平市は、県内で最も早く超高速通信網が全域で整備済みになったにも関わらず、ICTに関連する仕事がない状況で、雇用と求職者のミスマッチが人口流出の要因になっていると考え、ICTを活用して地域で仕事を創り出すことができるプレイヤーを育成することで、誰もが多様な働き方を可能なまちを実現する取り組みとして、この起業志民プロジェクトを始めたものです。

若年層流出状況のグラフ

ITのチカラで地域に仕事をつくる

若年層がもっとも求める職種であるとともに、人口減で地域の経済規模が縮小し続ける過疎地であっても、ICTを活用すれば場所を選ばずにビジネスができます。人口減少が急速に進む地方にとってICTの活用は不可欠なテーマであり、そのための技術者が必要との考えに立ち、起業志民プロジェクトの核として、知識ゼロからプログラミング技術を毎週土日・4週間という、わずか8日間でスマートフォンアプリなどの開発が可能なレベルにまで育成する「スパルタキャンプ」を行っています。

ここで育てた人材が市内で起業家やフリーランスとして活動。集積した若者が地域おこし協力隊となってプロジェクトに参画するといった事例が増加。プロジェクトを通じて育てた人材が後進の起業志望者の育成に当たるという起業家育成エコシステムの起点となっており、まさにICTを核とした若年人材の流入と集積、そして知の循環が始まっています。

講義風景

継続により発展しつづけるエコシステム

市のまち・ひと・しごと総合戦略にも主要KPIとして起業件数を位置付け、すでに目標値は達成済み。交付金不採択でも単独費で継続してきた事業であり、市としても重点事業の一つとして取り組んでいます。

本事業は、①宿舎も含めて無料のスパルタキャンプで人材を育成、②5年間家賃無償のシェアオフィス・八幡平市起業家支援センターで活動、③資金調達面で必要に応じて投資事業会社などとマッチング、④起業に至る、という流れで構成。最大の特徴は、本プロジェクトで育成した人材がスパルタキャンプなどで後進の育成を行う点であり、継続することで人材集積が進んでさらなる価値を生み、地域を発展させ続ける取り組みです。

起業志民プロジェクト概略図

地域への密着度、住民との関わり

市が主導する本プロジェクトの柱であるスパルタキャンプの運営は、第1期生が市内で起業した会社が担うとともに、起業した先輩が講師として後進の育成に尽力。このほか、市内で起業した人材が市役所のみならず、地域企業の課題解決に取り組むなど、地域との連携を深めています。

資金調達においては、地場のほか都内の投資事業会社とも連携し、経営面でのアドバイスや事業拡大が必要な場面への対応を図っています。

また、地元大学の学生を積極的にスパルタキャンプに受け入れるため、学生コミュニティとも連携を図っており、研究室を通じて学生へアプローチをするほか、先輩学生からの体験談を広める活動などを行っています。

スパルタキャンプを契機に移住する事例が続出しているほか。プロジェクトから生まれた事業として、子ども向けに本格的なプログラミングを教える事業「アクセルキャンプ」を市内で展開。地域の児童や親世代に住み慣れた地域でもICTの仕事をすることができる、というロールモデルを提示するとともに、未来のスター起業家を生み出すための活動も行っています。

アクセルキャンプ

取組の具体的な成果

本事業を通じて若年層の移住者・起業者が増え、ICTの仕事=都会の職業というイメージが一変。地方でもICTの仕事ができるとして、市議会で「起業志民プロジェクトを進めて欲しい」「スパルタキャンプは希望が持てる」と言及されるなど、地域でも期待を集めています。

スパルタキャンプ出身の起業家を中心に、国立公園八幡平を有する観光地としての魅力を発信する写真共有サイトの開発や、情報発信メディアの立ち上げなどを通じて、地域経済の活性化に寄与。行政課題を解決するアプリなども開発しており、メンバーが地域の経済振興のため、活躍しています。

育成した起業家たちによって地域で人材採用が進んでいるほか、都内ICT/IoT企業のサテライトオフィスも開設され、スパルタキャンプで育成した人材などを採用して、地方で多様な働き方を構築しようという独自の取り組みが行われており、新たな雇用が生まれています。また、こうした流動性の高い人材を目的に新たなサテライトオフィス立地も進んでいます。

スパルタキャンプが起点となり、自由な働き方を求めるプロブロガーやフリーランスといった、これまで市内には存在しなかった職の移住者の呼び水となっています。スパルタキャンプ期間中に参加者や修了生で濃密なコミュニティが形成されることで移住が促進されるなど、これまで市内に存在しなかった働き方・暮らし方に関する新しいカルチャーが生まれています

加えて、スパルタキャンプのエントリー数は毎回増え続けており、SNSのみでの集客にも関わらず1回当たり15人の定員に対して10倍以上の応募が通例です。北海道から沖縄まで、全国から志ある者たちが八幡平市に集うプラットフォームとして発展。加えて、海外在住の邦人からも、本プロジェクトで学ぶために帰国・移住したいというエントリーが殺到するなど、国内外を問わず起業を志す者の間で一定の存在感を確立しつつあります。

歴代のスパルタキャンプ集合写真

費用対効果

◆事業費

平成27年度(2015年度) 20,795千円(地方創生交付金17,000千円)
平成28年度(2016年度) 21,784千円(交付金不採択・単独費)
平成29年度(2017年度) 17,966千円(交付金不採択・単独費)
平成30年度(2018年度) 13,939千円(県地域経営推進費6,500千円)

※いずれもランニングコストのみで構築費なし

◆社会的効果

  スパルタキャンプエントリー数 起業家支援センター登録数 フリーランスなどの移住数
平成27年度(2015年度) 70人(5回) 0人
平成28年度(2016年度) 86人(3回) 4者・5人(法人1社) 0人
平成29年度(2017年度) 208人(3回) 6者・9人(法人2社) 0人
平成30年度(2018年度) 414人(3回) 11者・14人(法人4社) 5人

今後の取組予定

本プロジェクトは、継続することで人材の集積が図られ、規模が拡大していく仕組みになっており、今後さらなる発展が期待されます。

スパルタキャンプ修了後に継続して滞在可能なシェアハウス運営を元参加メンバーが中心となって独自に企画しており、高度な技術を有する者が滞在する場ができることで、新たな展開が発生するものと見込まれます

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2 件のコメント:

  1. ホリエモンチャンネルを拝見しました!
    既婚者で子供2人いるため、興味はかなりありますが、現状参加できないなというのが、本音です。
    私は岐阜県高山市という小さな観光都市に住んでおります。当然IT企業も少ないです。
    このようなスパルタキャンプを他の地方でもやっていただくことはできますでしょうか?そうしたら、僕も参加してフリーエンジニアとしてやっていきたいです。

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    1. 運営です。注記にも書いておりますが、これは岩手県八幡平市の実施しているプロジェクトです。
      他自治体で同様の事業を行うことはできませんので、まずはお住まいの自治体へ働きかけをしてみてはいかがでしょうか。

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