/ 2016年2月12日金曜日 / No comments /

大切なのは「今」か「将来」か?今の生活を犠牲にして将来に備えるという価値観


将来は、自分なりに理想を描き予想することができても、確実に見えるものではありません。だからこそ漠然とした不安を感じることも多いのです。

不安定な時代であるほど、今の生活を犠牲にしてまで将来に備えておきたくなりますが、将来が見えないものである以上、その備えが十分となることはありません。キリのない備えを優先するあまり、「今を生きる」大切さを忘れないことが重要です。

将来の備えを重んじる価値観に潜む危険性

精神科医の泉谷閑示氏は、将来の備えを重視しすぎる傾向について警鐘を鳴らしています。同氏は将来の備えの必要性を認めた上で、それを優先するあまりに今を生きることを犠牲にしすぎると、パニック障害や鬱を引き起こす可能性があると指摘します

将来に備えることは「頭」で考え出される理想であり、今を生きることは「心」が求める理想です。理性的な「頭」の指令ばかりに従い、「心」の欲求が満たされないという極端なアンバランスを続けることは、重篤な身体疾患を引き起こす可能性さえ懸念されると泉谷氏は述べています。

今を犠牲にする国民性にも変化の兆し

今を耐えて将来に備えることは、長きにわたり日本人の美徳とされてきたふしがあります。しかし、近年はその考えにも変化が見られるようです。

統計数理研究所による「日本人の国民性調査」では、1978年から「将来に備えるか楽しむか」についての意識調査を行っています。このうち全世代を対象とした調査では、「若いときは将来に備える方に重点をおくべきだ」という意見が、時代とともにわずかに減少しながらもなお「楽しむ方に重点をおくべきだ」という意見よりも大幅に多い傾向を示しています(2013年調査では「備える」65%、「楽しむ」31%)。

一方、20代を対象とした同調査では、「将来に備える」意識が1978年の62%から2013年の48%へと減少し、逆に「楽しむ」意識が35%から48%へと増加して両者は同率となっています。このように、備えに対する意識は世代格差が大きいため、世代交代が進むにつれて、日本人にも「今を楽しむ」意識がより浸透すると予測されています。

人生最後の日にやりたいことを優先した成功者

Apple社を創業し、カリスマ経営者として名を馳せたスティーブ・ジョブズも、「今を生きる」ことにこだわり続けた一人です。

同氏は、17才の頃に目にしたある言葉をきっかけに、毎朝、鏡に映る自分に「もし今日が自分の人生最後の日だとしたら、今日やる予定のことを私は本当にやりたいだろうか?」と自問自答することを日課にしていたそうです。その答えが「No」である日が続けば、変革のタイミングであると悟り、重大な決断にもこの自問自答を最大の手がかりとしたと言います。

革新的な製品を次々と世に送り出した背景に、「将来」よりも「今日」を優先する精神があったという事実は、私たちが生きる上でのヒントを与えてくれるのではないでしょうか。

おわりに

「将来」ではなく「今」を生きることを重視することで、本当にしたいことに向き合うことができます。心身が健康であるためにも、「将来への備え」と「今を生きること」とのバランスを保つことが大切です。

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